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2005.05.05

劇団東演『フィラデルフィアへやって来た!』レビュー感想

※劇未見の方にはネタバレ注意(公演は終了してますがいつの日か再演されるかも?)。
 演劇は舞台を実際に観てこそですので、文字では語りきれないです。

【演目】
演目=フィラデルフィアへやって来た!(第124回公演。1986年の19年前の再演)
団名=劇団東演
作=ブライアン・フリール(アイルランドを代表する劇作家)
翻訳=甲斐萬里江
演出=鵜山仁(2001第36回紀伊國屋演劇賞個人賞、2003第11回読売演劇賞大賞&最優秀演出家賞、1996『モーリースウィニー』ブライアンフリール作品演出)
小屋=新宿・紀伊国屋サザンシアター(タカシマヤタイムズスクエア)
時間=2時間20分、途中休憩有り(昼の場合、13:30〜15:50)
公演=2005/04/10日〜04/17日(8ステージ)
料金=一般4500円 ユース(学生)3000円 シニア4000円 プラスワン13500円 03/01前売開始
サイト
東演公式=http://www.t-toen.com/play/124.htm
アイルランド大使館=http://www.embassy-avenue.jp/ireland/information/st.html
演劇ポータルサイト=http://www.land-navi.com/backstage/link/47/tokyo/kouen/2005/4/t-toen
どんとこい梨乃サコスhttp://blogs.dion.ne.jp/dontokoi/archives/cat_10208.html

【スタッフ】
美術=倉本政典
音楽=古賀義弥
照明=鵜飼守
音響=斎藤美佐男
舞台監督=石井道隆
舞台写真=蔵原輝人
宣伝美術=大下詠子
制作=横川功
演出助手=福田雅美
舞台監督助手=井上卓・牧田亜紀
照明操作=加藤俊道・宮永綾佳・石坂晶子
音響操作=杉山秀行
大道具=夢工房
小道具=高津映画装飾
衣裳=原まさみ・東宝舞台衣装部
衣装製作=砂田悠香理・木下エミ子・
靴=神田屋・tpt
協力=西廣傳藏(治郎吉)


【キャスト】
S・B・オドンネル/ガーの父親=山中康司
ガー/表面の側。オドンネルの息子=南保大樹
ガー/内面の側。オドンネルの息子=森良之
ジョウ/村の若者。ガーの友人=奥山浩
ネッド/村の若者。ガーの友人=星野真広
トム/村の若者。ガーの友人=森下了太
マッヂ/オドンネル家の家政婦=腰越夏水
ミック・オバーン/村の神父=笹山栄一
リズィー・スウィーニー/ガーの伯母=和泉れい子
コン・スウィーニー/リズィーの夫=側見民雄(オフィスP・A・C)
ケイト・ドゥーガン/ガーの元恋人。後のミセス・キング=江上梨乃
ドゥーガン上院議員/ケイトの父=原田清人(フリー)
ボイル先生/教師=岡部政明(フリー)
ベン・バートン/スウィーニー夫妻の友人=豊泉由樹緒


【あらすじ】
アイルランド北部のバリベック村。
小さな雑貨商をしているS.B.オドンネルは息子ガー・オドンネルと慎ましい生活を送っている。
家事一切を取り仕切ってきたのが家政婦のマッジで、ガーにとっては母親代わりでもあった。
そのガーが、アメリカで成功しているスウィーニー叔母夫婦を頼ってフィラデルフィアへ出発するのは明日の朝早くだ。
かつての恋人や悪友たちと、何より、出発前夜だというのにいつもと変わらない様子で仕事をしている父との永い別れの時間が迫っている…。


【公演を知ったきっかけ】
ネットで公演を知りリノピオさんに申し込みました。

【今までに観劇した劇団東演舞台 2005.05現在】
シャンハイ・ムーン
風浪
チェンジ・ザ・ワールド
温室の花
月光の夏2003年
時の筏を漕ぎゆけば…
浄瑠璃の庭


【劇評】
会場と観客席の印象:
今回の席は最前列でした。演技者のツバが飛んで届きそうな距離が良かったです(映画では中央がいいのですが)。
そこから後方を振り返ると、4/10初日昼の部でサザンシアターのキャパシティ468名のうち7〜8割方埋まってました。

シナリオシノプシス:
若者ガーがアイルランドを離れ、アメリカフィラデルフィアに旅立つ前夜が舞台。(ところどころに回想として過去のシーンが挿入される)
遠出と家族との別離となる最後の一晩なのに、雑貨商の家はあまりにも普段どおりの時間が過ぎてゆく。家政婦のマッヂはいつもどおりに夕食の支度をし、父SBオドンネルは商品在庫の確認をガーにしてくる。
男友達や昔の恋人も訪問してきてくれるが、出発前の高揚感がなかなか出てこないガー自身ではあったが、その逆にこの家に残りたい強い想いもあるわけではなく…
「いったい俺は…」と自問自答して夜が過ぎてゆく。
そんなガーの言動を『表面のガー』として演じ、表には出さない心情を吐露する『内面のガー』として1人を二人役(南保・森)にて競演。

ストーリー感想:
現代アイルランド劇は今回が初見ですので、アイルランドらしきストーリーは詳しくは無いのですが、駐日アイルランド大使寄稿メッセージに『19世紀半ばからほんの30年前まで行われてきた移民はアイルランド史に何度も登場するテーマなのです』とあり、時代劇や西部劇のようにアイルランドを語るひとつのジャンルのようです>移民物語
(今回の話は西部開拓時代ではなく、20世紀に入ってからの現代の話のもよう)
とはいえ、日本人にはブラジルやハワイ移民は映画や舞台でよく取り上げられるわけでもないように見えます。しかしながらそんな直接的に同じシナリオでなくても、同じような心情は原田大二郎デビュー作『裸の十九才』(田舎から集団就職し現代の波にのまれる)とか、仏映画の名作『道 ラ・ストラーダ』(辟易してた田舎を抜け出したはいいが旅芸人の妻として苦労する)のように、郷里を離れて新天地に向かう話はいろいろ思い出されます。
しかしよく見てみると『やってきた!』はそれらとは視点が異なります。
旅立ちの物語では世間とか社会とかとの対峙が中心で社会的メッセージが往々にして語られますが、『やってきた!』は出発前のたった一晩の物語であり、旅とか社会とかは直接表に出てきません。
演目は『フィラデルフィアへやってきた!』という過去形なのにもかかわらず。
これはあくまでも若者ガー中心の人物間の物語であり、そこが珍しい視点だと思えました(単に私のレパートリー不足もありますが)。同時にそんな視点をアイルランドの劇として見られることで、より新鮮な物語として受け止めました。
さらに演技演出でおもしろかったのは、主人公ガー青年が二人で演じられているということ。つまり舞台に二人並んで登場し、ひとりが他者と対話し、もうひとりはそんな対話するガーに話しかけるのです。同意したり諭したり怒ったり…。
内面の役と外面の役の二人がテンポ良く言葉をつむぐ様子はおもしろい。
こうした心理面を演じるのは日本映画でも得意とするところであり、その場合は内面の台詞はわざわざ声に出しません。その者が無言であっても背中を見せているだけでも観客には心の言葉が届いていることでしょう。
ではそれと比べると、ガーの二人羽織は冗長な演出だったのか?
いえ、そこにフリールや演出鵜山氏の巧みさがあるのだと思いました。
ガーの演出演技によって、他方の父や家政婦マッヂらの内面について考えさせられたのです。
ガーは声に出して説明してくれるが、それ以外ではそういうフォローが無い。だから「この親父はガーにああ言われて何を思っているのだろうか?」などと逆に考えさせられるおもしろさが生まれてくるのです。
ガーが二人ががりで臨んでいるのに、結局、寡黙な父について内面外面の二人のガーは攻めあぐねているのです。
いやむしろ、ガーは自分自身のことだって判ってないのかもしれません。
今の田舎の雑貨商の父の手伝いは、そんな劣悪な環境とも言い難い。フィラデルフィアに嫁いでいったスウィーニー伯母さんはアメリカで成功した家であり、確かに近所からも羨まれるコネをガーは得られたわけだが(ガーの亡くなった母親にはたくさんの姉妹が居たが、ガーの母が亡き後はリズィースウィーニーの親族はガーだけとなっており、その子にいい思いをさせてあげたいと今回の渡米を提案した)、降って沸いた新しい人生に迷わず飛びつくほどにアメリカンドリームにあこがれていたわけでもない。ベストな人生ではないが悪くも無い。あまりにも普通の人生であり、渡米を積極的に選択する動機は実は無かったのではないか?
今回の演目が『やってきた!』と過去形になっているのは、配られたプログラムにて鵜山氏は「希望と興奮に酔って、ガーの心は既に"やってきた!"なのである」と述べてありましたが、
確かに劇前半はそういう雰囲気がありましたが、本当にガーの心はアメリカに飛んでしまっていたのだろうか?
舞台の最後にはベッドで一人(実際には二人で)俺はいったい何をしたいんだ…と佇むところで幕が下りるあたり、宣伝文だけ&題目だけではこの劇を理解消化することはできないぞと言われている気がしました。
どこか古き良き日本映画な雰囲気も漂う作品だったとも思います。

演技を見ての印象:
あの主人公二人組み演技がユニークでおもしろくあり、こういう見せ方になるほどなと感心させられました。
ガーがリビングと2階自室を頻繁に行き来し、台詞だけでなく体力的にもノンストップな演技は見事でした。

舞台や装置の印象:
回るとか交換とかの舞台仕掛けは無しで、動かさない分、しっかりとオドンネル家の様子を表していました。複数の段差が設けられ、あらゆる用途に応える良い設計がなされてます。
なんせ食事のテーブルの上でも演じるくらいですから(笑)>回想シーンでガーが恋人ケイトをテーブルに押し倒す

今回の江上梨乃さん:
ガーの元恋人ケイト役。昔にガーと結婚寸前まで行ったが議員な父から許可をもらえる自信が無くて破談し、ケイトはその後別の男と結婚。
お金や安定が大事なのか?ガーは結局ダメ男だったのか?と思えたのですが、その最後の晩にケイトはわざわざ会いに来てくれるわけで、そこまでの間だったのなら、無理してでも結婚してもうまくいったのではないか?
そんな未練っぽいところが、ガーに出立を奮い立たせない遠因になっているのかもと思えました。いっそ縁が切れていたほうが…
そういう未練さをケイトとガーの対話から感じられました。


【星取表】(某観劇レビューに倣い)
戯曲:戯曲未読の場合は、上演時の物語で判断
演出:上演時の舞台上での総合的演出を見ます
役者:主演の他、全体のまとまり具合を見ます
美術:舞台装置や衣装など、視覚的効果を判断
音響:背景音楽や効果音、聴覚的効果を見ます
制作:広報やチラシ、会場案内などを総合判断

戯曲:★★★☆☆ アイリッシュな舞台は初めて観ました
演出:★★★★☆ 初演未見のため鵜山さん効果を見極められず…
役者:★★★★☆ 主演ガーの二人のパワーや良し
美術:★★★★☆ アイルランド田舎の情景を屋内固定で映し出す
音響:★★★☆☆ ケルト音楽がもっとあったほうが
制作:★★★☆☆ 最近公演WEBサイトが充実してます


【その他演劇の話題】
ここ最近は観劇はしてませんが、映画をNHK衛星でまとめ観。
アニメ特集の週がこの前ありましたが、これが結構良作揃いでした。

『ユンカース カム ヒヤ』
ユンカースという人語が話せるペット犬とヒロインの女の子の物語。作画が実写っぽいので実写映画や演劇でも行けそう。ユンカースは願い事を叶える能力も持っていて女の子を励ましよく助けます。すごくいい相棒です。彼は「叶える力はボクが持っているんじゃない。キミ自身にあるんだよ。それを手助けするだけ。さぁ願いを!」
離婚寸前な両親を憂い、その子は「離婚しないで!」と願うのかと思いきや…。
「叶える力は自分の中にある」ことを判らせてくれた物語でした。ユンカースの口癖ふうに評するならば「うーん、すばらしいっ!」

『千年女優』
千年女王…ではない。戦中戦後に活躍し今は引退した大物女優のところに、彼女のファンだったプロデューサーが訪ねてきて、昔に拾って返しそびれた鍵を渡す。その鍵は旅行トランクの鍵で昔に彼女がある男から託されたもの。その人と戦後再び会えるよう、世界中を探せるよう、彼女は女優の道を選んだのだった。そこから彼女の人生の回想が始まる。
回想シーンと当時の彼女の出演映画(劇中劇)がクロスリンクして不思議な感覚のストーリー進行がおもしろい。自分が今どこなのか誰の視点なのか、ぐるぐる廻るようなムービー。これも作画が写実風で実写でやってもよさそうな感じですが、時代劇から宇宙SFものまで彼女の出演作が多岐にわたるのでアニメのほうが良いのか?
そして彼女はその探し人に出会えることができたのか? 聞き手のプロデューサーと一緒にその先どうなるか気になる大冒険話でした。

『銀河鉄道の夜』
これは懐かしいアニメ映画ですねぇ…。当時細野晴臣さんのサントラ買いました(CDでなくカセットテープ)。ファンタジーな要素がアニメ画と細野サウンドで加重され、原作の持つ幻想的な物語とマッチしている作品です。映画以外ならTVドラマよりも絶対演劇向きな作品。
登場人物が擬人化されたネコだというのもおもしろい。現在のようにアニメの歴史が積み重なってない時代に人間でない主役をよく思いついたものだ。それによって人間臭さを和らげて原作の本質に迫れていると思われる。この物語はきっと人に説法するとかのために書かれたものではないだろうから。
物語の最後には、ジョバンニの「サソリの火のように、本当の幸いのためならボクの身体を百ぺん焼かれたって構わない」の台詞が心に響いてくることでしょう。
メインテーマ曲はインストルメンタルなんですが、これの女性ボーカル付きもありましたよね…「リンドウの咲く丘の上、僕たちは黙り込んだね」みたいな。サントラ保存しておけばよかった…


【劇団東演の観劇レビューログ】
『時の筏を漕ぎゆけば…』
『月光の夏』(2003年版)東京公演
『風浪』
『温室の花』
『チェンジ・ザ・ワールド』
『シャンハイムーン』
『浄瑠璃の庭』


紀伊國屋ホールとサザンシアター、両方とも新宿紀伊国屋書店なんですね…
場所離れてても間違えそう…
NTDでした。

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