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2006年7月

2006.07.27

劇団東演『見果てぬ夢』感想

【演目】
演目=見果てぬ夢 PIC(パラータ自主公演委員会主催)Vol.3
団名=劇団東演
作=堤泰之(プラチナ・ペーパーズ)
原案=鈴置洋孝
演出=松本祐子(文学座)
小屋=下北沢・東演パラータ(世田谷区代田1-30-13)
時間=1時間半
公演=2006/05/06土-05/14日(9ステージ)
料金=一般3500円 ユース(学生)2500円 シニア3300円 プラスワン10500円
サイト
東演公式=http://www.t-toen.com/play/pic3_info.htm
       http://toen-actorsd.jugem.jp/?cid=1 劇団員BLOG
東演裏=http://www.geocities.jp/toen2001/kouenjyouhou.html
演劇ポータル=http://www.land-navi.com/backstage/tokyo/2006/5/t-toen
どんとこい梨乃サコス=http://blogs.dion.ne.jp/dontokoi/archives/2006-04.html

【スタッフ】
美術=乗峯雅寛(文学座)
照明=賀澤礼子(文学座)
音響=熊野大輔
舞台監督=古館裕司
舞台写真=入江紗和子 with クオリティフォトスクール
企画制作=パラータ公演委員会
演出助手=姶良勇一
照明操作=和田東史子
協力=ぷれいす 文学座 斉藤工務店

【キャスト】
西岡健/入院患者=能登剛
西岡京子/健の妻=岸並万里子
郷田忠志/入院患者・ホテルの社長=山中康司
郷田啓一郎/忠志の息子・二代目社長=森良之
飯尾浩/入院患者・役者の卵=原野寛之
羽生田美貴/飯尾の恋人・役者仲間=杉洋平
杉洋平/入院患者・画家=辰巳次郎
新藤正孝/内科医=南保大樹
武登志子/看護婦長=腰越夏水
江尻千夏/看護婦=江上梨乃
宗政りつ/毎日病院を訪れる老人=尾崎節子

【公式あらすじ&作品紹介】
舞台はとある病院の中庭。ここは入院患者と家族達の憩いの場だ。
看護婦をモデルに絵を描く男、芝居の練習をする若者、携帯電話で怒鳴り散らす初老の男・・・
入院患者達は思い思いの時間を過ごす。
ここでは病室では見せない患者達の素顔が垣間見えてしまう。
そんな人々をぼんやりと眺める男が一人。彼は先ほどガンと告知されたばかりなのだ。
男はやがて目を閉じる。午後の微睡みの中、男はどんな夢を見るのだろう・・・。

P・I・C委員会が企画制作するシリーズ
今回は『煙が目にしみる』などで知られる堤氏のハートフルコメディに挑戦です。
演出に第8回千田是也賞受賞の松本氏を招いて、大いに笑って泣いていただきます。
そして、生きることについて、ふと思いを馳せる、そんな作品を目指します。
(PIC=Parata Independent-performance committee)


【ストーリー】

とある病院の庭が舞台。息抜きのために病院スタッフ、患者、見舞い客など入れ替わりに訪れる。
ガン告知を婦長相手に練習する新米医師、
自称画家の入院患者とお小遣い稼ぎにモデルを請け負っている看護士、
自分の病名を見舞いに来る身ごもっている妻に明かせないままの夫、
入院しても影響力を保ちたいラブホ経営のオヤジと新しい経営をやりたい見舞いの息子、
舞台が控えているのに入院し病院でも稽古を欠かさない若手役者と彼に言い出せないことがある見舞いの彼女、
そして、病院に用がないはずの、花壇に水やりに通っている謎のおばあちゃん…

場が進んで各個の人間模様の事情が徐々に明らかになっていく。

夫は妻と子のことを思うと病名を明かせずにいたが、実は妻はそれとなしに感づいていた。
入院を期にホテル経営からはずされたと憤慨し息子のワンマンに怒る父だったが、実は息子は父親想いであり、ホテルもより良い経営に乗せるためであったこと。
彼女が舞台では彼をはずして代役を立てて進めていることを知り怒った彼が病院で暴れる事件が起きたが、口下手なはずだった新米医師と「君にはまだ未来があるじゃないか」と諭す弱気だった夫の活躍で沈静化。

そんな進行とは関係無しに、花壇に水をやり続けているおばあちゃん、
なんとおばあちゃん曰く「わたしの中には赤ちゃんがいるのよ…」
皆は驚き信じられない。花壇だってそこには種はまかれていないという。

ヒートアップを経て皆が冷静になれたとき、おばあちゃんの言動だけが浮いた形となったが
妻だけは「本当にそうなのかもね」と言い、彼女も種があるかどうかわからない花壇への水遣りを手伝うように。
妻は言う「願わなければ何も始まらない。願うからこそ叶うもの」
夫の難しい手術の成功確率はかなり低い。しかし確率とは世の中全体に対してであって、夫に限れば成功するかどうかの二者択一なのだ。
そう思うことで夫も手術にかけてみようと思うようになる。
オヤジさんも息子の意見を素直に聞き入れ、適切な治療が受けられる病院への転院を受け入れることにした。

おばあちゃんの子供が生まれるの言から始まった、願えば叶うとの気持ち。
そういう暖かい空気にその場は包まれていた。
そんなにぎやかさの中、おばあちゃんだけはマイペースで輪に参加せず庭のベンチに座ってうたたね中。
その幸せそうな寝顔は、これから本当に奇跡が起こりそうな予感がするのだった。


【劇評】
まずは楽しい!と思える物語でした。愛憎どうこう平和どうこうでなくて、見ている側と等身大な身近なテーマなのが、すんなり受け入れられました。
序盤では皆がギスギスしていて、その先暗澹たるものが予感されたのですが、誤解がとけたり考えかたを改めることで前向きに転換するストーリーの流れがおもしろかったです。
しかも舞台は病院で、元から何らかのネガティブ要素が多い状況だからこそ、そこからのポジティブ転換は気分良いものでした。

『見果てぬ夢』、フライヤーには各出演者の見果てぬ夢とは何かが綴られていました。ただの夢でない見果てぬ夢とは何か?という問いかけ。
舞台や物語に対して「見果てぬ」とは大きな枠組みに感じられ、その題名と内容とにはギャップがあるように私は感じました。それも私は単なる夢でない見果てぬ夢=叶うのが非常に厳しい、という考えがあるからでしょうか。

ところで『見果てぬ夢』といえば、これと同名の映画音楽があります。『ラ・マンチャの男』という洋歌劇の主題歌で、ラストにこの曲が流れるところが名場面だとか。
その歌詞は英語ですが、意味では星を掴もうずっと追いかけようというもので、見果てぬ夢=大きく構えてずっとそれを追い続けよう、という主旨のようです。
この曲を使ったHONDAのTVCMも、ホンダ車を乗り継ぎ乗り続ける映像と相まって、なかなか評判高いCMとしてネットの感想にありました。
http://www.devilducky.com/media/39128/再生にはQTプラグイン必要

東演の『見果てぬ夢』はこのラマンチャ映画&主題歌とは関連性はあるのでしょうか。
ラマンチャでは劇の中で劇中劇を演じるシーンがあって、それは東演版でも若手俳優&婦長さんが庭で熱演してた「キャリオカ~!!」な劇中劇と通じるものがありました(ここでは婦長さんがやたら上手だったのがミソ(笑))。
でもBGMでは、見果てぬ夢の曲は流れなかったようですし、関係ないのかな。

『見果てぬ夢』は人気作品のようで、他の劇団でも多く上演されているようです。
でも各劇団では演出担当が異なりますので、同じ話がどう変わるのかを見比べてみるとおもしろいでしょうね。

あと、演目チラシにはスタッフクレジットとか以外に『あなたにとっての見果てぬ夢とは?』のお題があって各出演者が答える形になっていたのですが、
能登さんあたり「私達の芝居をお客様に楽しんでいただくことです」とかある中で、
梨乃さんは「世の中の冷やし中華の具としてのきゅうりを抹消したい」というのが印象的(笑)。


【星取表】(某観劇レビューに倣い)
戯曲:戯曲未読の場合は、上演時の物語で判断
演出:上演時の舞台上での総合的演出を見ます
役者:主演の他、全体のまとまり具合を見ます
美術:舞台装置や衣装など、視覚的効果を判断
音響:背景音楽や効果音、聴覚的効果を見ます
制作:広報やチラシ、会場案内などを総合判断

戯曲:★★★★☆ 安心して楽しめました
演出:★★★☆☆ 場固定でダレない進行、ラストの温かな日差しの中で花びらの舞う幻想的シーンも良し
役者:★★★☆☆ 郷田スケベオヤジ、婦長さん熱演。キャリオカー!(笑)
美術:★★☆☆☆ 庭固定で衣装も現代で特記なし
音響:★★☆☆☆ 特記なし
制作:★★★★☆ WEBサイトが動くコンテンツでおもしろかった


【劇団東演の観劇レビュー】
2005.04『フィラデルフィアへやって来た!』
2004.10『浄瑠璃の庭』
2004.07『時の筏を漕ぎゆけば…』
2003.08『月光の夏』東京公演
2003.07『温室の花』
2003.03『チェンジ・ザ・ワールド』
2002.12『風浪』
2002.03『シャンハイムーン』

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